根室海峡に吠える
もうあんなトコ 二度と行かねぇ
波に向かって 隊長は 吠えた
ゥワオウゥゥゥゥゥ・・・ ・・・ ・・・
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フライマンの遠征組みと合流するか、
根室海峡の国境を目指すか、
直前まで迷っていた。
決め手は ゆうちゃん との会話だった。
隊長: 最近ど~よ。
ゆうちゃん: 上向いてます。今回は間違いゴザイマセン。隊長にも釣れます。
隊長: おぉホントかよ。うれしーコト言ってくれるじゃねぇーの。行っちゃおうかナ。
ゆうちゃん: 今晩はロックでデカソイとデカカジカを狙い、翌早朝はカラフトをイテコマス段取りです。
隊長: おぉそれって喰えるオサカナばっかりじゃねぇーの。行く~っ 行く行く。
ゆうちゃん: お任せください。ケッシテ悪いようにはいたしません。今回はタップリ楽しんでもらいます。
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ちょっくら明日のオカズを調達に行って来るワ。
買い物しなくてもダイジョーブだからね。
冷凍庫の中も整理して、スペース作っておいてチョーダイ。
出刃包丁も砥いでおいてね。
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いつになく暖かい見送りを受け、
隊長は、はるか北東の街に向かった。
陽はやがて西に沈もうとしていた。
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【 深夜 / 初ロック 】
真っ暗な漁港のあちらこちらで、青白いライトが光っている。
港の灯りとは明らかに違うそれはみ~んな釣人。
草木も眠るこの時間に、暗闇の中雨にうたれながら、黙々と釣りをしている様子が可笑しかった。
ゆうちゃんからワームなる物を拝借し、人生初の夜釣り。
しばらくしてゴゴンと来たのは、5寸にも満たないガヤだった。(初めてガヤを見た)
狙いは刺身用のソイと、汁用のカジカなのだが・・・
隊長: これって喰えるのかい。
ゆうちゃん: ・・・・・(返答なし)
隊長: ほんじゃ次を狙うワ。
しかしオサカナはぜんぜん釣れず、青ライトの釣人達も撤収。
隊長の撥水効果が無くなったジャケットに霧雨が沁み込む。
寒い。なんか惨め。
暖房を効かせたエアコンを最大にして就寝。
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【 翌早朝 / カラフトが釣れるらしい浜 】
爆睡してたら、3時過ぎゆうちゃんに起こされた。
最近は車で寝るコツを掴んだ。慣れとは恐ろしい。
やや寝ぼけながら移動。
粒の大きめな霧雨に打たれながらキャストするも、状況よろしくない。
数人いる釣人とともに、ぼんやり水面を見つめる時間が多くなる。
それでも沖でマスがジャンプするのを3回見た。
普通はやる気が出るのであるが・・・
隊長: ソイでも釣りに行くかい。手ぶらじゃ帰れねぇのよ。
ゆうちゃん: ほな一山向こうの港に行きマヒョか。旦那、そこならウジャウジャでっせ。
隊長: 行く行く、行くゥゥゥゥゥ・・・
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【 午前 / エピローグ 】
港内の水は意外に澄んでいて、底にいるオサカナや昆布なんかがよく見える。
ワームを落すとコツコツとアタリが伝わり、小魚が寄って来ている。
たまにググッと来るがバレが多い。
その度に、おぉとかあぁとかありゃぁとか声をあげる。
うまく掛かってくれたのは、1尺ほどの茶系魚。
昆布の陰から出てきた。
ゆうちゃん: 旦那、それはアブラコですぜ。
隊長: おぉ生まれて初めて釣ったぞ。これ喰えるのかい。
ゆうちゃん: ・・・・・・(返事なし)
しばらくして、またググッと来た。
ゆうちゃん: 旦那、それはシラミカジカですぜ。ちっちゃいけど・・・
隊長: おぉこれが噂のシラミカジカかい。生まれて初めて釣ったぞ。喰えるの?
ゆうちゃん: ・・・・・・(無言)
陽も高くなり(まだ8時ごろ)そろそろ終わりの時間。
別れ際にゆうちゃんが、使い込まれたログサーフ124Fを1本くれた。
これで起死回生を図れと言うことか、フランクフルトのお礼か・・・
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前回撃沈した砂浜は、帰り道から少し入った所にある。
浜辺の道路沿いには、濃い紫色のアヤメ(?)の花がそれは見事に群生していた。
目指す浜辺の水面は、大潮のためか鳴門海峡のように(行ったこと無いけど)波がぶつかり合っていた。
テトラの上に這い上がり、波の静かな水面にログサーフをぶん投げた。
おおスゲー、何と言う飛距離だ。ビューンと遠くへ飛んで行く。
潮に乗せながらチョコチョコ引っ張ってくると、ゴゴーンと来た。
ギュンギュン巻いてくると、黄金色に輝く魚体が波から飛び上がった。
そしてテンションが消えた。残念。
その後もう1回アタリが有ったげけど、沈黙。
ゆうちゃん、いつもありがとね。
もう二度と行かないと思うけど、次回もよろしくね。
(あぁ・・・大いなる矛盾)
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12時に帰宅した隊長は、家人の冷ややかな視線を浴びつつ午眠の爆睡。
晩飯時に目覚めると、ロクに喰う物がない。
台所では出刃包丁が怪しく光っている。
殺られそうな雰囲気・・・
隊長は家人の視線を避けながら小さくなってテーブルについた。
メシのおかずは、スキヤキフリカケときゅうりのQちゃんと味噌汁にけん坊のおぼろ昆布。
漁の無い男は、太古の昔からこうなる定めなのだ。
この夜、いつまでたってもビールには有り付けなかった。
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